2001年サイバドールの旅 9/10

「エル・・・どうやら、またあなたの早とちりかもしれないわよ!」
マミはそう言うと管制室への扉のロックに投げキスを送り、みんなは開いた扉に一斉に走り込んでいきます、
みんなを止めようとした警備員を南原が後ろからはがい締めにすると、ひざカックン攻撃で床に押し倒してしまいました。
管制室中に響くシャトル連絡用の通信スピーカーのノイズにまじってかすかに声が聞こえてきました。
「・・・あーあー、・・・これ使えるのかな?・・・」
「和也さんの声ですっ!!」メイが叫びます。
CBDエルが通信機の前に座っていた担当官を押しのけると、ヘッドホンを横取りし、
レシーバーを耳に当てて叫びます。
「ミスター和也!エルです、聞こえて?」
「・・・え!?今何か聞こえたよ?・・・これ本番ですか?もう一度おねがいします!」
「エ・ル・よ!ミスター和也、聞こえますか!?」
「・・・あっ!エルさんですか!今良く聞こえるようになりました!・・・みんな!通信機使えるよ!!」
和也はスピーカーの向こうにいるみんなに知らせているようです。
「・・・レナにもしゃべらせて〜・・・」レナにマイクを渡したようです。
「あのね、イカリヤ壊れちゃったの・・・でも、帰ったら和也が直してくれるって・・・」
「サラは無事かーーーっ!サラはーーーーーーーーっ!!」南原が通信機の前に陣取ってきました。
「・・・はいはい、怒鳴らなくてもちゃんと聞こえてますよ南原さま・・・私は無事です、でも腹減っちゃって・・・」
スピーカーの声がサラに替わります。
「よし分かったーーーーーっ!帰ってきたらラーメン屋一軒借り切って好きなだけ食わしてやるっ!!」
「ありがとうございます南原さま」スピーカーの向こうからサラが答えます。「でも一軒じゃ足りないかも」
「あらあらあら和也ちゃ〜ん!みんなを心配させていけない子ね〜!!帰ってきたらご馳走攻めにしちゃいましょ〜」
今度は通信機の主が南原からマミに変わります、もう心配の涙とうれし涙がごっちゃになったクシャクシャの顔をしていました。
「マミさんはすぐわかります!どうもご心配掛けてすみませんでした!!」
スピーカーの声が和也に戻りました。
「・・・ところで、メイとかすみちゃんもそこにいるんでしょう?」
「はい!和也さん!メイはここにいますっ!!」
「和也君!!」
メイがスピーカーの前に飛びついてきました、続いてかすみも。
「和也さん!無事だったんですねっ!!」
「・・・メイ、・・・ごめんね・・・心配かけて・・・」和也は言葉に詰まってしまいます、謝る言葉が見つかりません。
「私、今度は本当にだめかと思ったんです・・・でもかすみさんが励ましてくれて・・・だから私、私・・・」
メイは両手で顔を覆い、後は声になりませんでした、メイの後をかすみが続けます。
「和也君・・・本当に心配したんだから・・・でも、無事で良かった・・・」
「かすみちゃん、心配かけてすみませんでした、帰ったらちゃんと謝りますから!」
かすみはそんな正直な和也の言葉に、つぶやくように答えました。
「別に謝らなくたっていいよ、和也君・・・和也君のせいじゃないんだから・・・」
「聞こえますか?・・・こちらケイです・・・着陸地点の風向、風速、気温、湿度、気象状態のデータを送ってください、
誘導電波が受信できるまで私が操縦します・・・なお、シャトルの状態は極めて安定、帰還に何の支障もありません!」
「イエエェェーーーーーーーーーイ!!」
ケイの知らせにみんな飛び上がって大声で喜びます!!
メイは、待ちかまえていた南原の横をすり抜け、かすみに抱きつきました!!
仕方がないので南原は、一人で踊っています。
マミは、相手かまわず投げキッスを送リ始めました、もうみんな大さわぎです。
NASAの管制官達は、そんなメイ達の騒ぎをあっけにとられて見ていましたが、
CBDエルが英語で説明したとたん、みんな以上に大喜びし始めました!!
ガッツポーズを取る者、隣の者と握手する者、書類を放り投げて紙吹雪にしてしまう者、大騒ぎになってしまいます。
みんな、誰もかれもが祝っています!和也達の無事を!メイやかすみやサイバドール達の信頼や頑張りを!!

やがて雲一つない真っ青なカリフォルニアの空に、きらりと光るシャトルの姿が現れました。
グライダーのように滑空してきたシャトルは、みるみるその姿を大地に近づけ、
やがて美しい鳥の様に滑走路へと舞い降りていきます、タイヤを地に着け、パラシュートを開き、
和也達の乗ったシャトルは無事に大地に戻って来たのです。
滑走路に止まったシャトルの扉が開き、サラとレナが顔をのぞかせました。
「やっぱり、地球の空気はぶちうまいのー」サラが両手を大きく上に上げて、深呼吸します。
「見てー、迎えがこっちに来るよー!」レナが指さします。
計器パネルのスイッチを落とし、帽子をかぶって身支度を済ませたケイ、
操縦席から降りようとするケイの手を、和也が取ってあげます。
「ケイさんどうもすいません、最後まで面倒かけさせちゃって」
「いいのよ和也君」ケイが笑顔で答えます。
「私はシャトルも操縦できたし、とっても楽しかったわ、
でもね、ひとつだけお願いがあるの、いいかしら?和也君」
「何ですか?ケイさん」
「帰ったら、新しいサンダル買ってね!」
そう言うとケイは片方だけになったサンダルを手にぶら下げて、
和也に向かってウインクして見せました。

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