2001年サイバドールの旅 8/10

「和也君!」
「早乙女!」
「和也〜」
三人の呼ぶ声に和也は意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けました。
「・・・?僕は・・・どうして?・・・みんな・・・」
「和也〜!気がついたのね!」
レナが和也の首に抱きついてきました、抱きついた勢いで和也の体が漂っていきそうになるのを
他の二人が押さえます。
「良かった!和也君!気がついたのね、酸素タンクの予備が見つかったの、
それと二酸化炭素除去装置も作動させたわ。これでまたしばらくはだいじょうぶよ」
ケイが説明します。
「じゃが、はぁ次はないということなんじゃろ?」サラが言います。
「そう言うことになるわ、こうなったらやるしかないようね」
「やるって、何を?」まだ弱っている和也を支えながら、レナが聞きます。
「大気圏突入よ」ケイがきっぱり言い切ります。
「私達だけでやるしかないわ、助けなんて来るわけないもの」
「いつから始めるんじゃ?」
「今すぐよ」サラの問いにケイが答えます。
「さあみんな、座席についてベルトを締めて!」
みんなケイの合図でめいめいの座席に泳いで行きました。
和也もレナに支えられ、なんとか座席にたどり着き、ベルトを締めます。
「大丈夫かしら・・・」
操縦席に座ったケイは、握った操縦桿の遊びを確かめながら、不安げにつぶやきます。
「操縦には、自信あるんじゃろーが?」サラが皮肉っぽく言いました。
「気が散るから黙ってて!」ケイがやりかえします。
「修理が完璧じゃないことは私のプライドに反するけど、そんなこと言っていられなくなったようね、
後は私自身でフォローする!さあ、行くわよ!このサイバドール・ケイの最高性能を見せてあげるわ!!」
ケイは計器パネルのスイッチをつぎつぎとオンにしていくと、操縦桿を握った手に力を込めました。
バーニヤをふかし、スピードを下げたシャトルは少しずつ高度を落として大きく地球へと姿勢を変えていきました・・・。

「ごめんなさい・・・みんなを失望させることになるなんて・・・」
知らせを受け、管制室の建物へやってきたみんなの姿を見るとCBDエルが悲しそうに言いました。
ここはこの前、メイとマミが和也達を探しに来た時の建物でした。
「今、連絡があったの・・・シャトルが高度を落として・・・レーダーから消えたって!」
「えぇっー!!」みんなは絶句してしまいます。
「それって・・・、どういうことなんですか?・・・」メイが尋ねますが、誰も答えようとしません。
いつもさわがしい南原までも黙り込み、みんなを最後まで励まし続けたマミまでが、無力感に襲われます。
みんなは絶望感に包まれます、今まさに最後の望みも消えようとしていました。
「ちょっと待って!何?あれ!!」かすみがガラス越しに見える正面の大きなモニターを指さします。
指さした先には、緑色の点滅する小さな点が!!

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