素直な小悪魔.4

動物園のほぼ真ん中に芝が一面に敷き詰められた小高い丘があります、
和也たちはマミ&メイお手製のスペシャルランチをお昼にその丘の上の芝生に座って食べることにしました。
もっとも、お箸の使い方を知らないミサは、もっぱらフォークを使ってのランチとなってしまいましたが…。
「…それじゃ僕は留守番してるみんなのために、お土産を買ってくるよ」お弁当を食べ終わった和也はそう言うと丘をかけ降りていきました。
残った女の子二人は買っておいた缶コーヒーを飲みながらペチャクチャとおしゃべりです。
かすみは、武蔵もみじ山のあちこちに住んでいるサイバドール達について話してあげ、
ミサはかすみに自分の得意分野のひとつ、占星術について解説する事にしました。
「・・・と言いますのは、ひとつはほとんどだれとでも打ち解けることが出来る特技を持っていて、
そしてもう一つは社会や環境に偉大な足跡を残したいと思っているからです、
結論としては、自分の意思を通したかったら争いよりも和を重んじるべきだ、という考え方をするのが天秤座の方々の特徴なんです」
「へえー本当、よく当たってるわ・・・和也君の性格にぴったり!」かすみは感心しました。
和也の名前が出たところでミサは少し黙り込み、思いきってかすみに尋ねてみました。
「かすみさまも和也さまのことをお好きなんでしょう?」
ぶっっ!! かすみはもう少しで飲んでいたコーヒーを鼻から噴き出しそうになりました。
「あなた、いきなり何言うのよっ!」手の甲で口の周りを拭うかすみにミサはおしぼりを渡し、話を続けます。
「わたくしも女ですから、好きな男の方の前で女はどういう風に振る舞うかぐらい存じあげております、
それに今のお言葉、和也さまの性格もよくご存じの様ですね」
(うぐっ、こいつ私よりずっと年下のくせに鋭いとこ突いてくるじゃないの!)と思ったかすみは一瞬ひるみます。
ミサは少し勢いをおとして言葉を続けました。
「・・・でもあのメイドとは仲がおよろしいんですね」
「あのメイドって・・・メイのこと?(何が言いたいの、この子は?)」
「そうです、あのメイドに和也さまを盗られてしまうと思われたことはないのですか?」
「そんなこと考えたこともないよ(え?私何言ってるの?)」
「どうしてです?」
「どうしてって、だってメイと和也君とは・・・(・・・)」
そう言いかけたかすみは次の言葉に詰まってしまいます、メイと和也君とは何なの?、だったら自分と和也君とは?
そんな事、今まで考えたこともありませんでした。
いや、考えようとしなかったのかも・・・
ミサはかすみの顔を不思議そうに見つめ、返事を待っています。
かすみはこれまでの事をもう一度思い起こしてみました。
・・・かすみと和也との平凡な日々に突然現れたメイ、
・・・次々とかすみ荘を訪れ、住み着いてしまうサイバドールたち、
・・・そしてもうおしまいかと思われたあの恐ろしい出来事、
いろいろな事が短い時間の間に次々と起きて自分の考えと正面から向き合う時間がなかったように思えました、
そしてそのほんとの気持ちを、和也に伝えることも・・・
「・・・そんなこと聞かれたって、ボクには分からないよ・・・」かすみはこう、つぶやくように答えるのが精一杯でした。
「そうですか、かすみさまにもおわかりにならないんですか・・・」
「え?わからないって、どういうこと?」ミサの言葉に、かすみは戸惑います。
「ひょっとするとあのメイドが、ご主人様からとても大切にされていて幸せそうだから、敵対心が起こらないのでは?・・・」
ミサの質問にかすみは答えませんでした、半分当たってはいるけれど、半分ハズレだから。
「…私の国では、メイドが主人からあんなに大切にされることなど、あり得ないことなのに…」
ミサはため息をついて、つぶやくように言いました。
「この街のあちこちにも多くのサイバドールが住んでいるようですが、皆幸せそうですね・・・私の国の者たちとは違って・・・」
「え?」
「和也さまも立派なお方です、あれだけ多くの者に囲まれながらみな平等に扱っておられる・・・
きっとあの方はサイバドールに特別な感情をお持ちなんでしょうね・・・」
「特別な感情って?・・・だって和也君はサイバドールのメイドシステムの…」
「かすみさま!あれをご覧下さい!何かあったようですよ!!」
かすみの言葉を遮り、声を上げたミサは、騒ぎの起こっている方を指さしました。

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