ケイさんの電脳地獄車 『初詣』


かすみ荘、和也の部屋にて。(一応、他のメンツもいるのだが・・・)

「サラさん・・・今日は元旦ねえ・・・」
「元旦じゃのう・・・うぶぅ・・・」
「まだ具合悪そうね。大丈夫?」
「大丈夫な訳ないでしょ。マミ姉と飲みくらべした酒が残っている上に余計な運動までさせられてさぁ・・」
「“酔っぱらいモード”をキャンセルすれば楽になるわよ?」
「それが出来れば苦労しないよ。昼間だってキャンセルしたはずなのに、いつの間にか元に戻っているし・・」
「プログラムにバグがあるのかもね。修正してあげてもいいわよ〜?」
「気持ちだけ受け取っておくよ。余計な借りは作りたくないんでね」
「頑固な人ねえ・・・ところで気になることがあるんだけど」
「またそれかい・・・何よ」
「日本人はお正月に初詣に行くのよね・・で、私達もさっき行ってきた訳だけど、果たして“御利益”というのはあるのかしら?」
「あるも何も、賽銭投げてきたんだから無けりゃ割に合わんでしょうが」
「でも、お賽銭投げただけで願いは成就するものかしら〜? それで通るものなら初詣に行った人々の願いはみんな叶っているはずよね〜?」
「そりゃ神様だって万能じゃないだろうから願いを聞く相手は選ぶでしょうよ。それで通るなら世界はとっくの昔に平和になっているはずだよ」
「という事は無作為抽出で願いを叶えているという事になるのかしら〜? そうなると1円でも1万円でもお賽銭の価値は同じという結論に達するわよね」
「それでもまあ、高い賽銭投げた方が願いを聞き入れてもらえそうな気がするんだろうね、人間は。神様のルールなんて誰も知らないんだろうし」
「そこなのよ。そもそもいるかどうかも分からない神様にお金払ってお願いするなんて非合理的だと思わない?」
「・・・あたし思うんだけどさぁ、人間て本当は自分で思っているほど神様なんて信じていないんだと思うよ。でなきゃ神前で永遠の愛を誓った夫婦が、くっだらない理由で離婚したりする訳ないじゃないの」
「それと私の話と関連はあるの?」
「だから神様は本当はいないと自分に言い聞かせれば、物事を都合のいいように解釈できるでしょ? 実際に神様が現れて自分の法に従えって言ったら、人間は絶対うざったがるはずだよ」
「確かに何かのルールがあれば、その抜け穴を探したがる人はいるわね」
「要はさ、賽銭投げる事で気が済むんならそれでいいんだよ。その“御利益”が賽銭分じゃ足りなくて、後金を要求されるようなものじゃ誰も有り難がらないと思うよ」
「そういうものかしらね・・・それともう一つ気になることがあるんだけど」
「今度は何よ」
「神様もいるとして、お賽銭払ったとして・・・果たして“私達”の願いは叶えてくれるのかしら? CBDである私達の願いは」
「・・それはアレかい? 神様は機械の願いは叶えてくれないって事かい? それは困るよ。無作為抽出なら余計にそういう事で選り好みして欲しくないよ。一応賽銭入れているんだからさぁ」
「でも神様は自分のルールで物事を決めているかも知れない訳よね? 機械が願い事をしてくるなんて、想定していなかったとしたら?」
「この時代はともかく、200年後にはそういう時代が来ているんだからさぁ、もう少し柔軟な対応してくれないとこっちも詣でのし甲斐がないよ」
「・・・じゃあ、私が買った“これ”も御利益がないかも知れないのね・・・」
「何よそれ、交通安全のお守り? アンタ何のためにそんな物買ったの?」
「フフフ・・・ヒントをあげましょうか。統計学的に見て自動車免許を持つ持たないに関わらず、“歩く人”の9割6部5厘はこれを持ち歩かないという事よ」
「どこから持ってきた統計なのよ、それは!・・・何か猛烈に嫌な予感がするのう・・・」




















   (ボーナストラック・『舞台裏』)


「で? 何なのこれは」
「今後の展開もあるし、作者の方から自分の作品に登場させた主要キャラのプロフィールを簡単にでも紹介してくれって頼まれたの」
「アホクサ・・まぁいいけどね・・・()内は仮イメージとイメージ・ボイス(敬称略)だそうです。はい」

 サイバドール・リップ (ちょっと田舎臭いGackt/小杉十郎太)
外見年齢・21歳。サイバーダイン社内メンテナンス課勤務。サラの元彼氏。

「ちょっと! 元とは何よ、元とは! まだ切れてないわよ!」
「そう思っているのはサラさんだけかもよ」
「それにしてもあいつ、あたしより“年下”だったのか・・・知らんかった・・だけど“ちょっと田舎臭いGackt”ってどういう意味よ」

 サイバドール・ミル (『ナデ○コ』のイネス先生/土井美加)
外見年齢・32歳。医師免許を持つCBD。現在サイバーダイン社内メンテナンス課勤務。

「彼女は現在お蔵入りしている温泉旅行の話にチョイ役で登場する予定だったのよね。今回ようやく日の目を見た訳だけど・・・」
「何か悲しい身の上を持たされちゃったねぇ」

 サイバドール・ムンク (『青の○号』の紀之真弓/川澄綾子)
外見年齢・16歳。フィンランドにあるサイバーダイン・ユーロのヘルシンキCBD工房にて製造されたメイド・タイプのCBD。
ここで作られたCBDには芸術家にちなんだ名前が付けられており、兄弟・姉妹モデルには「モネ」「ミレー」「ダリ」「ヘリング」「ラッセン」「シャラク」「ウタマロ」等がある。
また、ここで作られたCBDは全て一品物であり、同型モデルは存在しない。現在、八神希美所有。

「簡単にといいながら、随分詳しいプロフィールだねぇ」
「『MISSING WORD』のプロットの段階では影も形もなかったのよね、彼女は。卓也さんと希美さんが会社でマミさんの行動履歴の受け渡しをするのは不用心であることに気付いて、急遽思いついたキャラらしいんだけど・・」
「最初は無口だという設定のはずだったのに、後半は随分喋るようになったしねぇ」
「彼女が作られた背景も含めて、“キャラが一人歩きし出した”んでしょうね。そういえば欧米時代でも現在でも名前のせいでからかわれることが度々あったみたいで、本人はその事にコンプレックスを抱いてるらしいわ」
「『叫びチャ〜ン』てかい? それでも黙って耐えているんだろうから偉いよね。あたしがそんな扱い受けたら張り倒してやろうかと思うけどね」
「ちなみにこの作品世界では、外国製のCBDは二文字名前にはこだわっていないという設定だそうです」
「確かにバリエーションきつそうだもんね。というより、こだわっていたら読者に馴染みにくい名前も引っぱり出さなきゃならなくなるものね。ドナとかベラとか」

 八神希美(やがみ・のぞみ) (中年になった谷かすみ・・しかし血縁は定かではない/三石琴乃)
年齢・38〜39歳。この作品世界に於ける早乙女卓也の元妻。サイバーダイン社開発部班長。

「かなりの問題キャラだよね」
「作者としては裏設定を知る前からアニメ本編の卓也さんは独身だろうと思っていたそうだから、確信犯的な設定を作った事になるわね」
「どっちにしても、マミ姉みたいなCBDがいるんじゃ奥さんなんてお呼びじゃない状態にならざるを得ないんじゃない? 主任は」
「それを成り行きで結婚したりするから、話がややこしくなるのよね〜」
「それ以上に気になるのは、かすみに似ているって事だよねえ。もしかして子孫てぇ事?」
「・・資料によると“血縁が定かでないというのは谷親娘と共通の祖先を持っているかも知れないという事”とあるわ・・つまりかすみちゃんの子孫である確率は50パーセントというところかしら?」
「いいえ、多分この人、かすみの子孫じゃないわ」
「あら、千草さん、いつの間に〜?」
「い・・いいんスか? きっぱり言い切っちゃって」
「そういう口幅ったい書き方するという事は子孫じゃないって事よ。第一これ以上アニメの裏設定に抵触するような謎を増やしてどうするの」
「まぁ確かに・・えー、思わぬ角度から結論を出されてしまいました・・じゃあ、八神班長はかすみの子孫ではないと・・そういう事でいいね?」

 サイバドール・マミ

「あれ? 何でこんな項目があるのよ。 何かコメントしろって事?」
「確かに『M.W』のマミさん・・・普通はああいう描き方しないわよね〜」
「しないよねぇ」
「やっぱりマミさんは英語訛りのインチキ日本語を喋らないと・・」
「いやいやいやいやいや! そうじゃなくってぇ、本編のマミ姉と著しく違う描写が目立つって事よ」
「卓也さん襲っちゃうしね〜。勉強になるわ〜」
「だからそうじゃなくってぇ・・・」

 早乙女卓也

「あたしが言うのも何だけど・・・『M.W』の主任って・・格好悪いよね。マミ姉にオモチャにされてるし」
「決めるときは決めているけど、ちょっとズレてる所があるわよね〜」
「おまけにウィルスが早乙女の仕業かも知れないって、思いっきり勘違いしてるしね」
「それは仕方ないわ。あの頃は南原君の仕業だって誰も知らないんだもの」
「ところであたし主任って呼んでいるけど、本編の卓也さんは肩書き不明なんだよね」
「社長と共同経営だそうだから、少なくとも役員待遇なのは確かなんだけど・・・」

 サイバドール・リーフ (『おね○ぃ』の江田島こ○は/佐久間レイ)
外見年齢・30歳。家政婦型のCBD。

「・・・台詞の上でしか登場しないのに、何で仮イメージとかがあるんだろうね」
「さあ・・・でもこの人の捨て身の活躍があったからこそ、今もサイバーダイン社が存続している訳だから足を向けて寝られないわよね〜。あら? お墓もないのにどこへ足を向けてって・・」
「それ以上考えるなっ」

サイバドール・ミチ (25歳になった『セーラー○ーン』の木野まこと/山像かおり)
外見年齢・25歳。サイバーダイン社カスタマーサービス課所属。身長180センチ。趣味は料理と折り紙。

「あらま、ミチまで引っぱり出してきたよ。『FACE TO FACE』に出ていたなんて憶えている読者いるのかね」
「一応あの作品の準主役ですものね。でも何で今頃・・・」
「・・・なーんか含みがあるんだろうね、作者は」
「紹介は終わったかしら? じゃあ締めは私がもらうわね」
「千草さん、まだいたんですか〜?」
「昨年はご厚情賜りまして有り難うございました。本年も『ハンドメイド・メイ』をよろしくお願いいたします」
「「よろしくお願いいたします」」


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