ACS外伝 「年越しだよ全員集合」1/2


「ふう、こちらの方は問題なし。どうだシズ、そちらの様子は」
征嵐は懐の通信機を取りだすと、シズを呼び出した。征嵐の姿は神官用白衣姿である。今年の8月までは、まさか着る事になろうとは思ってなかった代物であるが、なかなか決まっている。
清浄な雰囲気を感じさせる所など6月にシズが来て、いろんなことを経過するまでは、出しようがなかったものだ。
その雰囲気が今はある。大切な友人と差し向かいで話すことは最早適わないが、別に後悔しているわけではない。あれは、他にどうしようもなかったのだから。
『はい、問題ありません。使い魔全員配置に着きました』
そういうシズは今、社殿の横にはえた大木に登って境内を見渡す位置に居る。別にそこでなくても、という薦めにもかかわらず、「いえ、ジャンプする所はみられたくないので」といって、大木に取り付いているのだ。
上から人が降ってきたらいっしょだと思うのだが・・・。そう思う征嵐だったが、警備関係はやはり専門家にまかせておこうかと思ったので、あまり強く言わないことにしたのだ。
『でも、いいんでしょうか。授与所とか手伝わなくて』
「こういうときほど、警備が大事ですって云ったのはそっちだろう。大丈夫だよ。結局バイトに雇った巫女さんたちも、身内だけで済んじゃったんだから。全員勝手知ったる仲だし」
「そう、ですよ〜、シズちゃん。私も一回巫女とかやってみたかったんだからぁ。あなたは警備が専門でしょ。わたしは、何でもやるのが専門なんだから」
そういうCBDシアは巫女姿である。金髪であるが10人並な顔立ちが幸いしてあまり目立たない。
美少女な外国人巫女さんが手伝ってるな〜、ぐらいにしか見えないのだ。
「どう? 征嵐君あらためて惚れ直したりなんかし、ませんか?」
そういって、征嵐の横を通りかかったシアが、くるりんと回ってみせる。確かになかなか可愛い。
「いや〜、悪くないですね。でも巫女装束姿ならシズにはかないませんよ♪ ところでシアさん・・・・・・、その〜」
「いやん、征嵐君ラブラブ! あ、そっちの事は云いっこなし! ね♪」
「はい、わかりましたよ。ところで、クロウディアさんは、ちゃんとやってるんでしょうかね〜」
「征嵐君うまく流しましたね。クロウはさっき連絡したら除夜の鐘が鳴り始めたら、寺の方から移動してくるって言ってました、ですよ」
シアの突っ込みにもかかわらず、何気なく話を続ける征嵐。進歩したものである。
「それにしても、くじの結果とはいえ、えらいメンバーが瑞雲寺に振られたもんだな」
『そうですね。綾菜さんに、スイ君に、クロウディアさんと元から居る洸さんか・・・。何も起こらないほうが不思議な組み合わせですね』
「何もないことを祈ろう。まあ、あのメンバー以外が問題を起こせば逆に何もおきない気がするしね」
「あ、まーちゃん、それはこっちに渡して・・・・。そうそう、ありがとう」
征嵐とシズの会話を尻目に、シアが通りかかったバイトの巫女さんに声をかける。
呼ばれた方も、トテトテと近づいてくるとお守りをシズに渡した。征嵐の後輩で主役の一人、鳳麻由理(おおとりまゆり)である。スレンダーで可愛く、元気さともに儚さを感じさせる少女である。
「シアさん、はいどうぞ。先輩何かあったんですか?」
「いや、何もないぞと話してた所。それと、瑞雲寺のほうのうわさを」
「まあ、それじゃ今ごろ、クロウさんがむかついてるかもしれませんね。そういうことには、すぐ気付きますから」
「そうだな、それがあの人の力だし」
『それにしても、随分人が増えてきましたね』
シズが麻由理との話に割り込んだ。その時いいタイミングで除夜の鐘が聞こえてきた。瑞雲時の鐘である。
ゴ〜ンという鐘の音が聞こえる中、同時に父である神官の声が聞こえてきた。
「こら、征嵐!そろそろ、戦場が近づいてくるぞ。ちゃんと仕事しろ!」
「父さんもこんな所に居るなよ! もう時間がないぞ。 鳳さん、悪いね」
「いえ〜、いいんですよ〜。私も巫女装束を着てみたかった口ですし」
そうって、彼女はクスッと笑った。



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